悠月屋 16/11/23

「思い出」

 

今日、私の思い出の品を友人にあげた。

高校の二年の時、初めて行った町で買ったCDだった。

彼女は今日が誕生日のようだ。

私も昨日初めて知った。

気が利くようなものは、元々何も持っていない。

夜の真ん中で本棚を漁った。

 

「持ち物が増えるとは恐ろしいことですね」

という様なスナフキンの言葉があったと思う。詳しくは覚えていない。

この品も、思い出とともに私の持ち物であった。

当時は、数少ないコレクションの一つであった。今も変わらない。

そう。私の思いが形に現れた物だ。

思いを込めて大事にしてきた。

だからこそ、この品を渡すことにした。

思い出の品というものは、歳とともにひたすら増えていくばかりだからだ。

 

思いは物としてあり続ける限り、当事者がいる限り、それは失われない。

私も品を見る度、無意識に過去を思い出していた。

これから手元に品がなくても、当時のことを思い出す時があるだろう。

抜き取った本棚の隅がぽっかりと空いた。

 

でも、ずっと大切にした品だから、今誰かの幸せに変わる。

品が手元から失われることは恐れない。

それがまた、いい思い出になるのだから。